医学的なアドバイス

2005年04月15日
座骨神経痛について

講道館ビルクリニック所長 小山 郁 先生(整形外科)の投稿です。
腰椎の下部および仙骨の、骨の間から出ている神経の枝が、いったん集まり、一本の太い神経、「坐骨神経」となります。この神経の走行に沿って、特に殿部から大腿の後面あたりにかけて感じるような痛みを、「坐骨神経痛」といいます。

  原因となる主な疾患としては、「腰椎椎間板ヘルニア」、「変形性腰椎症」があります。「腰椎椎間板ヘルニア」とは、骨と骨との間のクッションである椎間板が何らかの原因によってつぶれて、後方を走る神経の枝を圧迫するものです。「変形性腰椎症」とは、椎間板の老化により、その上下の腰椎の縁が鋭く変形したり、骨と骨を結ぶ靭帯が厚くなったりして、神経を圧迫するものです。若年のアスリートには「椎間板ヘルニア」が多く、中高年以降になると、「変形性腰椎症」の要因を考えなければいけません。「変形性」とは、要するに「老化」のことです。
 ランニングでの上下動により、椎間板には圧迫されるストレスが繰り返し加わります。これによって、坐骨神経痛の症状を悪化させてしまうことがあります。
 治療は、まずは安静です。症状に応じて、消炎鎮痛剤や、ビタミン剤などを用います。慢性的に痛みが続くような場合には、腰椎牽引などの理学療法を行うこともあります。
 腰を傷めた人が、よくコルセットを巻きます。これは腹圧を高めることにより、腰椎にかかる負担を軽くしてやろうというものです。予防としては、腹筋や背筋をバランスよく鍛えることが重要です。筋肉を鍛えて、自前のコルセットをつくるぐらいのつもりでがんばってください。

2005年03月14日
運動の強さの目安の取り方

東京医科大学教授(腎臓内科)中尾俊之先生からの投稿です。

運動の強さの感じ方は、各個人の基礎体力により個々に違います。

たとえば、日ごろは何も運動をしていない人が、運動会で少し走っただけでもたいへんな思いをするのに対し、日ごろよりトレーニングを積んでいる運動選手では、運動会
走るなどはほんの準備体操程度のことでしょう。各個人にとっての運動の強さの目安は、ある運動をしたときの1分間当たりの脈拍数によってわかります。(表参考)

強度の割合 強度の感じ方
60歳代/50歳代/40歳代/30歳代/20歳代
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100% 最高にきつい 、身体全体が苦しい
155/60秒/165/175/185/190  
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90% 非常にきつい 、若干言葉が出る 息がつまる
145/155/165/170/175
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80% きつい、続かない、やめたい、喉が渇く
135/145/150/160/165
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70% ややきつい、緊張、どこまで続くか不安である
125/135/140/145/150
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60% やや楽である、いつまでも続く、充実感
120/125/130/135/135  
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50% 楽である、フォームが気になる、物足りない
110/110/115/120/125
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40% 非常に楽である、楽しく気持ちがよい、物足りない
100/100/105/110/110
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30% 最高に楽である、じっとしているより動いたほうが楽
90/90/95/95/95
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20% 座っているのと同じ、安静
80/80/75/75
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2004年06月26日
ランニングでは水を、そして塩も補給しましょう!

東京医科大学教授(腎臓内科)中尾俊之先生からの投稿です。
ヒトの身体の細胞はいつも体液に浸っている状態で生きています。

身体の細胞が浸かっている体液は細胞外液とよばれ、その量は体重のおよそ20%にあたります。ですから、体重50 kgの人では約10リットルの細胞外液を持っていることになります。この細胞外液という液体は単なる水ではなく、ナトリウムやカリウム、カルシウム、マグネシウムなどが溶け込んでいます。身体の細胞自身にも、もちろん水分が含まれていますので、これを合計すると身体の水分量は体重のおよそ60%にもなります。
 汗をかかない時でも、ヒトの皮膚からは自分で気づかないうちに、何時も一定量の水分が蒸発しています。また呼吸をするたび、息の中に水分が失われます。こうして気づかないうちに1日1リットル程度の水分が毎日、細胞外液から失われているのです(正確には、体重×15 ml / 日)。ですから、水分を摂らないとたちまち細胞外液が不足してしまいます。細胞外液が不足して細胞自体の活きが悪くなるような状態が脱水症です。これが進めば生命の維持が困難になってしまうのです。
ランニングで汗をかくとその分余計に、細胞外液が失われることになります。また、ランニングによりスッスー、ハッハーと呼吸が早くなると、その分、息の中に水分が余計に失われます。もし、ランニング後に体重が1kg減っていたとしたら、細胞外液が1リットル減少したと思わねばなりません。これは脱水症に近い状態です。細胞の活きが悪くなります。血液もドロドロになります。
気温が高い日の長時間のランニングでは、2リットル近くの汗が出ることもよくあります。水分の補給をしないと危険です。また、汗には水分と一緒にナトリウムやカリウム、カルシウムも出ていきます。とくにナトリムが多く、汗を1リットルかくと、およそ食塩3g分が失われます。ですから、給水と同時に食塩補給も必要なのです。水だけ飲むと細胞外液が薄まってしまい、だるさや疲労、筋肉痙攣(つり)の原因になったりします。是非今度、水分補給と同時に塩を舐めてみて下さい。汗を多くかく人ほど、ランニング時の細胞外液量の維持、ひいては体調維持に効果的と思います。  
                         (中尾 俊之)

2004年06月01日
運動不足と医療費

講道館ビルクリニック 所長(整形外科)小山 郁 先生からの投稿です。

柔道の総本山、講道館の中に開設したクリニックで、スポーツ外傷やスポーツ障害を中心に診療をしている医師です。

今までスポーツとは関わりなく生きてこられた方達にも、身体を動かす楽しみを知ってもらい、健康になっていただきたいと思っています。
さて、いきなりクイズです。
「喫煙」、「肥満」、「運動不足」、健康に害があると思われる三つのファクターの中で、一番、医療費を押し上げているのは何でしょうか。
 答えは・・・。
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 すぐにスクロールしないで、少し考えてみてください。
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 もう少し考えて・・・・・・。
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答えは「運動不足」なんだそうです。
人の出入りの少ない、九州のある地域で検討したところ、適正体重レベル(BMIが22以上で25未満)で、非喫煙者で、毎日1時間以上歩いている群の平均医療費は1年に約23万円だったのだそうです。
ところが、「喫煙」のみの該当者は医療費がプラス7.5%、「肥満」のみの該当者はプラス2.0%、「運動不足」群ではプラス25.5%となり、すべてに該当する人は健康的な生活をしている人より、約30%も医療費が高かったと報告されています。
つまり、「運動不足」という要因が医療費に与える影響が最も強く、「喫煙もしないが運動もしない人」より「少々喫煙をしても運動をしている人」の方がよく、「元気のない標準体重」よも、「元気な肥満」の方が健康だということが分かります。
私自身も運動はしていますが、別にそんなことまで考えて運動しているわけではないんです。運動後のビールや食事、仲間との会話が楽しみなだけなんです。