講道館ビルクリニック所長 小山 郁 先生(整形外科)の投稿です。
腰椎の下部および仙骨の、骨の間から出ている神経の枝が、いったん集まり、一本の太い神経、「坐骨神経」となります。この神経の走行に沿って、特に殿部から大腿の後面あたりにかけて感じるような痛みを、「坐骨神経痛」といいます。
原因となる主な疾患としては、「腰椎椎間板ヘルニア」、「変形性腰椎症」があります。「腰椎椎間板ヘルニア」とは、骨と骨との間のクッションである椎間板が何らかの原因によってつぶれて、後方を走る神経の枝を圧迫するものです。「変形性腰椎症」とは、椎間板の老化により、その上下の腰椎の縁が鋭く変形したり、骨と骨を結ぶ靭帯が厚くなったりして、神経を圧迫するものです。若年のアスリートには「椎間板ヘルニア」が多く、中高年以降になると、「変形性腰椎症」の要因を考えなければいけません。「変形性」とは、要するに「老化」のことです。
ランニングでの上下動により、椎間板には圧迫されるストレスが繰り返し加わります。これによって、坐骨神経痛の症状を悪化させてしまうことがあります。
治療は、まずは安静です。症状に応じて、消炎鎮痛剤や、ビタミン剤などを用います。慢性的に痛みが続くような場合には、腰椎牽引などの理学療法を行うこともあります。
腰を傷めた人が、よくコルセットを巻きます。これは腹圧を高めることにより、腰椎にかかる負担を軽くしてやろうというものです。予防としては、腹筋や背筋をバランスよく鍛えることが重要です。筋肉を鍛えて、自前のコルセットをつくるぐらいのつもりでがんばってください。